子どもの「お口ぽかん」(口が常に開いた状態)は、口呼吸の習慣化を示すサインです。口呼吸が続くと、顎の成長が妨げられて歯並びが悪化するほか、虫歯リスクの増大や睡眠の質の低下など、全身の健康にも影響を及ぼします。本記事では、お口ぽかんの主な原因、歯並びや健康への具体的な影響、家庭でできるトレーニング、歯科医院での治療法と受診の目安を解説します。
「お口ぽかん」セルフチェックリスト
日常で気をつけるべきサイン
口呼吸が習慣化しているかどうかは、日常の行動から確認できます。以下のチェックリストで、お子様の状態を確認してください。
本来、人間は鼻で呼吸するのが自然な状態です。まずは、お子様に以下のサインがないかチェックしてみましょう。
お口ぽかん・口呼吸セルフチェック
- 睡眠時にいびきをかく
- 朝起きると唇がカサカサに乾燥している
- 子どもの口臭が気になる
- クチャクチャと音を立てて食べる(咀嚼音)
- 食べ物を飲み込むときに顔をしかめる 常に口が開いており、前歯が見えている
上記の項目に複数当てはまる場合は、口呼吸が習慣化している可能性があります。
放置はNG!「口腔機能発達不全症」の可能性
これらの症状は、2018年に保険適用となった「口腔機能発達不全症」の初期症状に該当する可能性があります。口腔機能発達不全症とは、食べる、話す、呼吸するといったお口の基本的な機能が、年齢相応に十分に発達していない状態を指します。
対処せずに放置すると、顎の成長が妨げられ、歯並びの悪化や顔立ちの変化(アデノイド顔貌)につながる恐れがあります。チェックリストに該当し、気になる症状がある場合は、早めに小児歯科や耳鼻咽喉科を受診してください。
なぜ「お口ぽかん」になってしまうのか?主な原因
子どもが「お口ぽかん」の状態になる背景には、「鼻づまり(耳鼻科的な要因)」と「口周りの筋力低下(歯科的な要因)」が主な原因として挙げられます。なお、指しゃぶりなどの口腔習癖や精神的要因が関与するケースもあり、これらは互いに影響し合うこともあります。
アレルギーや鼻炎による「鼻づまり」
第一の原因は、アレルギー性鼻炎や慢性鼻炎、アデノイド肥大(鼻腔の奥にある咽頭扁桃というリンパ組織の肥大)による鼻づまりです。鼻の通りが悪く、鼻で呼吸がしづらいため、無意識のうちに口呼吸で酸素を補おうとします。その結果、常に口が開いたままになります。
柔らかい食事による「口周りの筋力低下」と「低位舌」
第二の原因は、口周りの筋肉(口輪筋など)の筋力低下です。柔らかく調理された食べ物を食べる機会が増え、食事の際の咀嚼(そしゃく)回数が減少しています。噛む回数が減ると、口の周りの筋肉や顎の筋肉が十分に発達せず、唇を閉じておく力が弱くなります。
さらに、舌の位置も大きく関係します。正しい舌の位置(スポット)は、舌先が上の前歯裏の歯茎の膨らんだ部分(切歯乳頭後方)に触れ、舌全体が上あごに吸い付くように接している状態です。しかし、口周りの筋力が弱いと、舌が下あごに落ちてしまう「低位舌(ていいぜつ)」になりやすくなります。舌が正しい位置にないと、お口ぽかんを助長するだけでなく、歯並びの悪化にも直結します。
口呼吸が子どもの歯並びに与える悪影響
「お口ぽかん」による口呼吸は、単に見た目や行儀の問題ではありません。顎の成長に影響を与え、歯並びの悪化につながります。
顎の成長が止まる?歯並びが悪化するメカニズム
綺麗な歯並びは、頬や唇が外側から歯を押さえる力と、舌が内側から歯を広げる力のバランスによって形成されます。この仕組みは「バクシネーターメカニズム」と呼ばれます。
しかし、口呼吸になると常に口が開いたままになるため、外側からの押さえがなくなります。さらに舌は下へ落ちるため、内側から広げる力も正常に機能しなくなります。その結果、上あごの骨が十分に横へ広がらず、V字型に狭く変形します。歯が並ぶためのスペースが不足し、歯が重なり合って生えたり(叢生)、前歯が前方に押し出されて出っ歯になりやすくなります。
毎日の「飲み込み方」が前歯を押し出している
舌に癖がある子どもは、唾液や食べ物を飲み込む際にも影響が出ます。通常は奥歯を噛み合わせ、舌が上あごに押しつけられるように働きますが、舌癖がある子どもは、飲み込む瞬間に舌を上下の前歯の間に突き出します(異常嚥下癖)。
人間は1日に数百回以上の嚥下(飲み込み)動作を行っています。この力が毎日繰り返されると、上下の前歯が噛み合わない「開咬(かいこう)」を引き起こします。開咬になるとさらに口が閉じにくくなり、悪循環に陥ります。
歯並びだけじゃない!全身の健康や発育へのリスク
口呼吸の影響はお口の中だけにとどまりません。口呼吸は、虫歯や感染リスクの増大、睡眠の質の悪化など、全身の健康にもリスクをもたらします。
虫歯・歯周病リスクの増大と局所的な防御機能の低下
口呼吸でお口の中が常に乾燥すると、唾液の分泌量が減少します。唾液には、食べかすを洗い流す作用や細菌の繁殖を抑える働きがあります。唾液が減少すると、虫歯菌や歯周病菌が繁殖しやすくなります。
また、鼻呼吸の場合は、鼻毛や粘膜がフィルターの役割を果たし、ウイルスや花粉の侵入を防ぎます。しかし口呼吸では、冷たく乾燥した空気が直接喉や肺に届くため、鼻腔本来の加湿・フィルター機能が失われ、風邪をひきやすくなったり、扁桃腺が腫れやすくなったりと、感染リスクの増大につながります。
睡眠の質の低下が招く、集中力と発育への影響
睡眠の質への影響も重要な問題です。口呼吸のまま仰向けで眠ると、舌が喉の奥に落ち込みやすくなり、いびきや「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」を引き起こすリスクが高まります。
深い睡眠が得られないと、成長ホルモンの分泌が阻害され、身体の発育に影響を及ぼす可能性があります。日中の眠気や集中力の低下を招き、学習面や情緒面に影響を及ぼす可能性があります。
今日からできる!家庭でのお口ぽかん改善トレーニング
お子様の「お口ぽかん」に気づいたら、まずはご家庭でできるトレーニングや習慣改善から始めてみましょう。
楽しく鍛える「あいうべ体操」と遊びの工夫
お口の周りの筋肉を鍛える代表的なトレーニングとして「あいうべ体操」があります。以下のステップで毎日続けてみてください。
「あー」と口を大きく開く 「いー」と口を大きく横に広げる 「うー」と唇を強く前に突き出す 「べー」と舌を思い切り下あごに向けて出す
この4つの動作を1セットとし、10回繰り返します。食後に10回×3セット(朝・昼・晩)、1日合計30セットを目安に行います。継続することで、口を閉じる力の向上が期待できます。また、風船を膨らませる遊びやシャボン玉遊びも、楽しみながら口周りの筋肉を使うトレーニングになります。
食事中の「よく噛む工夫」と「正しい姿勢」
日々の食事の習慣を見直すことも大切です。一口30回を目安によく噛むことを意識させ、根菜類やフランスパンなど、噛み応えのある食材を積極的にメニューに取り入れましょう。
また、食事中の「姿勢」も重要です。背筋を伸ばし、足の裏が床(または足置き台)にしっかりついた状態で食事をすることで、踏ん張りがきき、顎の筋肉を正しく使って噛めます。
歯科医院で行う専門的な「お口ぽかん・歯並び」治療
ご家庭でのトレーニングで改善が見られない場合や、すでに歯並びに影響が出ている場合は、歯科医院での専門的な治療が必要になります。
根本から改善する口腔筋機能療法(MFT)
専門の歯科医院では、お口の機能を正しく育てるための「口腔筋機能療法(MFT)」を実施しています。歯科医師や歯科衛生士の指導のもと、舌の正しい位置や飲み込み方の習得を目指します。
負担の少ない「マウスピース型矯正装置」
MFTと並行して効果的なのが、プレオルソやマイオブレースといった「マウスピース型矯正装置」を用いた小児矯正です。就寝時と日中の数時間のみ装着する柔らかい装置で、舌を正しい位置へ誘導し、口呼吸から鼻呼吸への移行を促します。痛みや負担が比較的少ない治療法です。
治療を始めるべきタイミングと耳鼻科との連携
お口ぽかんや歯並びの治療は、顎の成長が活発で可塑性が高い「5歳〜7歳頃」から始めるのが適切とされています。この時期に対応することで、将来、抜歯を伴う矯正治療が必要になるリスクを軽減できる可能性があります。
また、鼻づまりの原因がアレルギー性鼻炎にある場合は、歯科のトレーニングだけでは十分な効果が得られにくくなります。その際は、まず耳鼻咽喉科で鼻の治療を先行して行うことが重要です。鼻づまりがある場合は、耳鼻咽喉科と歯科が連携して治療を進めることが重要です。
「お口ぽかん」に関するよくある質問
ここでは、保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 小児矯正やMFTは何歳くらいから始めるのがベストですか?
A. 一般的には顎の成長が活発な5歳〜7歳頃から始めるのが効果的とされています。ただし、症状が強い場合は3歳〜4歳から家庭での簡単なトレーニング指導を開始することもあります。気になった時点で早めに相談するのがよいでしょう。
Q. 「お口ぽかん」は成長すれば自然に治りますか?
A. 習慣化した口呼吸や舌の癖が自然に改善する可能性は低いとされています。成長に伴い、顎の骨格が口呼吸に適応した形に変化するため、気づいた時点で正しい習慣へ導くサポートが必要です。
Q. アレルギー性鼻炎で常に鼻が詰まっています。歯科と耳鼻咽喉科、どちらに先に相談すべきですか?
A. まずは耳鼻咽喉科を受診し、鼻の通りを良くする治療を優先してください。鼻が詰まった状態では、歯科でお口を閉じるトレーニングを行っても苦しく、継続が困難です。鼻の治療と並行して、歯科でのトレーニングを行うのが理想的な順序です。
Q. マウスピース型の矯正装置は子どもが嫌がらずにつけてくれますか?
A. 最初は口の中に違和感を覚えるお子様もいますが、柔らかい素材で痛みが少ないため、多くの場合は数日〜1週間程度で慣れます。装着に不安がある場合は、歯科医師に相談してください。
まとめ
子どもの「お口ぽかん」は、単なる癖ではなく、歯並びの悪化や全身の健康、学習や発育にも影響を及ぼす口呼吸のサインです。早期に気づき、家庭でのトレーニングや歯科医院での専門的な治療を通じて正しい口腔機能を身につけることが、お子様の将来の健康を守る鍵となります。
お子様の口呼吸が気になる場合は、放置せず、まずは専門医へご相談ください。
【関連リンク】
当院のご利用を検討中で初めての方へ
名古屋駅(名駅)から徒歩5分!当院へのアクセス・診療時間
当院へのお問い合わせはこちら
24時間受付中!当院への来院ネット予約