オールオン4(All-on-4)は、最少4本のインプラント体(人工歯根)を顎の骨に埋め込み、連結した人工歯を固定する治療法です。取り外し式の総入れ歯と異なり、ズレや外れの心配がほとんどなく、天然歯に近い力で噛めます。本記事では、総入れ歯との違い、メリット・デメリット、治療の流れ、費用相場を解説します。
なぜ総入れ歯は「合わない」「噛めない」のか?構造的な限界
総入れ歯を使用している方の多くが、「食事のたびにズレる」「硬いものを噛むと痛みがある」「話している途中に外れそうになる」といった不満を抱えています。長年調整を繰り返しても問題が解決しない根本的な原因は、総入れ歯の構造と顎の骨の経年変化にあります。
粘膜吸着の仕組みによるズレと噛む力の低下
総入れ歯は、歯茎(粘膜)の上に床(しょう)と呼ばれる土台を乗せ、唾液の表面張力を利用して吸着させる仕組みです。例えるなら、ガラス板の間に水を挟んでくっつけているような状態です。そのため、強く噛み締めたときや横方向の力が加わった際に、ズレや浮きが生じやすくなります。健康な天然歯の噛む力を100とした場合、総入れ歯では10〜30程度に低下するとされています(※数値は研究や個人差により異なります)。
顎の骨の吸収(痩せ)が引き起こす不適合
歯を失うと、顎の骨には「噛む刺激」が伝わらなくなります。刺激を受けなくなった骨は徐々に吸収され、痩せていきます。顎の骨が痩せると入れ歯を支える土台の形が変わるため、以前は合っていた入れ歯でも、数年後には隙間ができて合わなくなります。
オールオン4(All-on-4)とは?総入れ歯との主な違い
このような総入れ歯の構造的な限界を克服する治療法として選ばれているのが「オールオン4」です。最少4本のインプラント体(人工歯根)を顎の骨に埋め込み、それを支柱として連結された人工歯を固定します。
固定式による高い安定性
最も大きな違いは、取り外し式の総入れ歯に対し、オールオン4はインプラント体にネジで固定される点です。食事中や会話中に外れる心配がほとんどなく、天然歯に近い感覚で日常生活を送れます。
天然歯の約80〜90%まで回復する噛む力
総入れ歯では難しかった「硬いものをしっかり噛む」という動作が可能になります。顎の骨に直接固定されたインプラントが人工歯を支えるため、天然歯の約80〜90%の力で噛めるとされています(※数値は研究・個人差により異なります)。肉やリンゴといった硬い食べ物も噛みやすくなります。
上顎を覆わない快適な設計
上顎の総入れ歯は吸着力を高めるために口蓋(上あごの天井部分)を広く覆う必要があり、これが食べ物の温度や味を感じにくくさせたり、嘔吐反射を引き起こしたりする原因になります。一方、オールオン4では口蓋を覆う必要がないため、違和感が大幅に軽減され、食べ物の温度や味を直接感じられます。
オールオン4と従来のインプラントの違い
オールオン4は、従来のインプラント治療(歯1本につき1本のインプラントを埋め込む方法)とも異なる特徴があります。
骨造成を回避できるメカニズム
長期間入れ歯を使用し顎の骨が痩せてしまった方は、従来のインプラント治療では「骨が足りない」と断られることがあります。しかし、オールオン4は骨が十分に残っている部分を選んでインプラントを斜めに埋め込み、力学的に支える設計になっています。そのため、骨造成手術(骨を増やす手術)を行わずに治療できる場合があります。
手術当日に仮歯が入るスピード回復
従来のインプラントでは、骨と結合するまで数か月間、歯がない状態(または仮の入れ歯)で過ごす期間が必要でした。オールオン4は、斜め埋入によって手術直後から強い固定力(初期固定)を得られるため、手術当日に固定式の仮歯を装着できます。その日のうちに、見た目と基本的な噛む機能が回復します(※口腔内の状態により異なります)。
オールオン4のメリット・デメリットとリスク
外科手術を伴うため、リスクも存在します。メリットとデメリットを正しく理解することが大切です。
治療のメリット(身体的・費用的負担の軽減)
埋め込むインプラントの本数が片顎で最少4本(多くても6本程度)で済むため、従来の総インプラント治療と比べて手術時間が短く、身体への負担を抑えられます。また、使用する部品が少なくなる分、合計の治療費用も抑えられます。
知っておくべきデメリット(外科手術とインプラント周囲炎)
インプラントを顎の骨に埋め込む外科手術が必要となるため、術後の腫れや痛み、出血のリスクが伴います。また、インプラントは虫歯にはなりませんが、日々の清掃が不十分だと、歯周病に似た「インプラント周囲炎」を引き起こすリスクがあります。
寿命を延ばすための手入れと定期メンテナンス
固定式であるため、自分で外して洗うことはできません。歯間ブラシやスーパーフロスを用いた毎日の丁寧なブラッシングと、数か月に一度の歯科医院でのプロフェッショナルケアが不可欠です。この手入れを怠ると、インプラントを支える骨が吸収され、脱落につながるおそれがあります。
オールオン4が向いている人・適さない人
以下に、オールオン4が適するケースと適さないケースを示します。
オールオン4による改善が期待できるケース
- 現在の総入れ歯が合わず、痛みや外れやすさに悩んでいる方
- 過去に歯周病などで多くの歯を失った方
- 従来のインプラント治療で「骨が足りない」と断られた方
- 治療期間をできるだけ短くしたい方
治療が適さない・推奨できないケース
- 重度の糖尿病や心疾患などがあり、内科医から外科手術の許可が下りない方
- 日々のブラッシングや定期的な通院(メンテナンス)が困難な方
治療の適否は口腔内の状態や全身の健康状態によって異なるため、歯科医師による精密検査を受けた上で判断することが重要です。
治療の流れ(初診から本歯装着まで)
手術後、どのように治療が進むのか、一般的なスケジュールを紹介します。
初診・精密検査
CTスキャンで顎の骨の状態を立体的に把握し、治療計画を立てます。
手術・仮歯装着(1日目)
抜歯(残存歯がある場合)とインプラントの埋め込みを行い、その日のうちに固定式の仮歯を装着します。
治癒期間(約3〜6か月)
インプラントと骨がしっかり結合するのを待ちます。この間も仮歯で食事や会話が可能です。
型取り・本歯の製作
骨との結合が確認できたら、最終的な人工歯(上部構造)の型取りを行います。
本歯の装着
強度と審美性に優れた最終的な人工歯を装着し、治療完了です。以降は定期メンテナンスへ移行します。
オールオン4の費用相場とクリニック選び
治療を検討する上で、費用と長期的なメンテナンスを見据えたクリニック選びは重要です。
費用相場と保証制度の確認
オールオン4は自由診療のため、費用は片顎で200万円〜400万円程度が相場です(クリニックや地域によって異なり、東京など都市部では300万円〜450万円以上になるケースも多くみられます)。医療費控除の対象となりますが、高額な治療であるため、クリニックを選ぶ際は費用だけでなく「インプラント体や上部構造に対して何年間の保証制度が設けられているか」を確認してください。
通院しやすい立地の重要性
オールオン4は治療完了後も定期的なメンテナンス通院が必要です。長期にわたって通い続けることを前提に、自宅や職場から通いやすいクリニックを選ぶことも重要な判断基準です。
オールオン4に関するよくある質問
Q. 手術中の痛みはありますか?
A. 局所麻酔に加えて、静脈内鎮静法(点滴によるリラックス麻酔)を提供するクリニックもあります。対応しているクリニックでは、うとうとと眠っているような状態で、痛みや恐怖心をほとんど感じずに手術を終えられます。
Q. オールオン4の寿命はどれくらいですか?
A. 日々の適切なセルフケアと歯科医院での定期メンテナンスを継続することで、10年〜20年使用できるケースが多く報告されています。インプラント自体の10年生存率は90%以上とされています。
Q. 手術後、いつから食事ができますか?
A. 手術当日に仮歯を装着した直後から、やわらかいもの(お粥やスープ)であれば食事ができます。本歯が入るまでは極端に硬いものを避ける必要がありますが、噛めないという不便さは大きく軽減されます。
まとめ:総入れ歯からオールオン4への切り替えを検討するために
総入れ歯の「合わない」「噛めない」という課題は、固定式のオールオン4によって大幅に改善できる可能性があります。外科手術や日々の手入れといった留意点はありますが、しっかり噛める状態を取り戻すことは、食事や会話など日常生活の質の向上につながります。
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